「なんやこれ、鷹塾で食料品のお店が出せる位持って来ている」
辰吉が呆れ返っているが、三吉は苦労人、貧しい塾生達に少しずつ持ち帰らせている。鷹之助先生の意志を受け継いで束脩(入学金)や謝儀(授業料)は取らず、先生へのささやかな心付けである二十文程度の月並銭だけで、おまけに食材を貰って帰ってくるために、父親や母親がせめて三吉先生のお役に立てばと、荒屋の修理や三吉の着物を洗濯に来る
reenex 價錢。
「お父さんも、お母さんも忙しいのに、どうぞ気を使わないでください」
三吉もめいっぱい気を使っている。地回りは相変わらず三日と空けずにやってきては辰吉に追い返されている。
ある日、ひょっこりと亥之吉と三太が鷹塾にやって来た。
「あんなぁ、東町のお奉行が、わいに会ってくれることになったのや」
「へー、どんな根回しをしたの?」辰吉が訊く
許智政醫生 華洋坊。
「江戸の北町奉行に一筆書いて貰ったのや、何でも大坂東町のお奉行と若いころ長崎奉行所で同輩やったらしい」
「ははは、また虎の威を借るのか」
「何をぬかす、わいが精出して北町奉行の手助けをして広げた人脈や、それに鷹之助先生の名を出したら、憶えていた与力が居ましたのや」
「それで、乗り出してくれるのか?」
「いや、今はそれどころではないと言って、わいのすることに目を瞑ってくれるそうや」
「それだけか?」
「そうや、今大坂にナンチャラ組という非道働きの盗賊団が江戸から流れてきて、大店を襲っては店中の者を皆殺しにして千両箱を奪って去る夜盗が出没しているのやそうな」
「うわ、酷い、
華洋坊大店の人た